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ICTコーディネーター・阪上からのメッセージ

同志社中学校の公開授業に参加して

先週、2月9日(月)に同志社中学校さんにて中1英語科の公開授業が行われ、

縁あって、視察させていただくことができました。素晴らしい取り組みです。

英語科・反田先生から伺った内容も加えて共有します。

 

まず、 同志社中学校は今年度から保護者負担でiPad miniの1to1(生徒一人1台)を導入していますが、その準備には3年を掛け、十分に検証されていたようです。その流れをご紹介します。

 

導入の進め方

フェーズ1) 2012年2学期:20台のiPad導入。授業実践を行う

  期間:2ヶ月(のべ18時間)

  実践クラス:中学2年3クラス

  生徒のモチベーションがあがるなど、よくわかった

  1台ずつ個別に設定した。私物のPocket wifiを活用

 

フェーズ2) 2013年度:40台のiPad導入

  授業時に、1:1を実現できるようになる

  従来の校内ネットワークに接続

  社会の授業で調べ学習、体育でフォームを見比べる学習に発展

  英語ではiBooksなどをつかった学習も行われた

 

フェーズ3)2014年度

  新1年から1:1を導入

  学習のツールとして授業・家庭学習で活用

  リマインダーで宿題をチェックしたりする活動も自主的に始まる

 

*ポイント!

ここでまず素晴らしいのが活用シーンを見極め、その効果を把握するために段階的な導入と複数教科での実践を重ねてきていることです。おそらくこの過程で運用での懸案なども出てきて、その課題解決についても協議なさったのではないかと思います。

よく1回で必要台数をすべて導入してしまうケースが見受けられますが、こちらのようなステップを踏むと様々な準備が整います。そして、このステップを踏むことで、段階的な教員研修も行えます。同志社さんでは、年に2回の研修をしているとのことでした。

 

公開授業の内容

当日は、2クラス同時進行の授業(1クラスはハーフクラス)でした。

それぞれのクラスには6ブースが用意され、それぞれにSkypeが起動しているiPadが配置されていました。その接続先には異なる国々の講師が接続されていて、事前に作成していた質問で生徒はインタビューをします。

1班2名程度。3分間話をし、次のブースへ移動する。

質問をしていく中で、どの講師がどの国の人かを当てるというのが課題でした。そのため、「どこの国ですか?」などの質問は禁止されましたね。

 

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インタビューをしているときの様子もまた面白い!

普通、このような交流学習があると手元には、ワークシートだけですね。でも、この生徒たちは違いました。

質問ワークシートを写真で撮っていたのでしょうか?もしくは色々と事前に調べたことでしょうか。質問をしながら、手元のiPad miniを操作しながら、当日用意されたワークシートに書き込んだり。まさにマルチタスク

(残念ながら、容量の問題で動画を添付しませんでした。。。)

 

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授業の後半では、1人の講師に焦点を絞って、講師紹介をつくるという課題が与えられました。課題はその場で完成させるのではなく宿題ともなって、ロイロノートをつかって提出することに。

「提出箱」は家庭からもアクセスすることができるため、自宅でインターネットが使える場合には、自宅からも提出することができるんですね。

 

なお、保護者負担で購入しているiPad miniですが、当然保護者に案内をしたときに質問があったそうです。そのときに想定されていたのが、無線LANがあるかないか。

公立学校の導入で持ち帰りが懸念されるのは、まさにここですね。

環境の公平性が担保できるかどうかです。

しかし、そこはさすが同志社さん。ほとんどもってる想定、もしくはスマホなどのテザリングを考えれば、ほとんどの家庭が何かしらのネットワークがあるはずということで。

そして、実際に無線LAN関連で質問をされた保護者は1-2名だったようです。

それだけすでに普及しているということですね。

 

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さて、この取り組みは、株式会社ベストティーチャーのサービスの支援があって実現しています。ベストティーチャーさんは、テレビ会議(ここではSkype)などの仕組みを利用して、隙間時間などで英会話を行えるようにするためのサービスを展開しています。


オンライン英会話なら無料体験できるベストティーチャー 

 

すでに複数の学校や教育委員会から相談もされているようで、今後注目されるサービスになると思います。なかなか海外の学校と交流となると、気をつかうことが多いです。

時差であったり、学習進度であったり、学年であったり。

そのあたりを解決してくれるひとつの方法になりそうです。

 

授業準備

同志社さんは恵まれていることに、各学年に1名のネイティブ教員がいらっしゃるそうです。しかし、それでも授業中は1対18になってしまい、単純計算、ひとり2分しかない。

今回のような仕組みをすることで、一人当たりの関わりの機会を増やすことができます。

そしてなによりも大事なのが、1回の授業で複数の国の人と交流できるという点だと思います。

普段接するネイティブ教員は、おそらくアメリカやイギリスやオーストラリアの方でしょう。しかし、現実社会で英語を扱う人たちはもっといますし、生の英語は綺麗ではありません(発音や文法という意味で)。

 

まさに、多様性ですね!

このあたりは英語力として大きな財産になると思います。

 

そして、複数の国の人と関われるということは、多民族理解を授業に取り入れることができるということでもあります!

これからのキャリア教育としてもとても重要なポイントです。

 

1時間の中で、半分以上を聞いたり話したりする機会は普段できません。決まったことを繰り返したりの英語の授業が一般的ですが、今回のように自ら考えて、というのはこれからの能力としては大事ではないか?というのが授業づくりのきっかけだったようです。

 

インフラ

今回の取り組みを実現するためには、Wi-Fi設備の充実がもちろん重要ですが、そのあたりについても同志社さんは事前に設計されていました。

Wi-Fiアクセスポイントは中学校が授業を行う教室すべてと教科のメディアスペース、図書・メディアセンターの合計47か所に設置しています。教室は基本的に1教室に1アクセスポイントとし、機器はフルノシステムズのACERA 800STを採用。また、無線ネットワーク管理システム「UNIFAS」を導入し、1アクセスポイントにつながる端末数は100台を超えても対応可能で、ローミングもスムーズに行えるように設計されています。

同志社さんでは、生徒が教室を移動して授業を受ける「教科センター方式」を採用しているため、どの教室で授業があっても対応できるように、昨夏に一気にWi-Fiネットワークの工事を行われました。最終完成年度(2016年度)には900台の端末がつながるため、それを見越した整備をされたのですね。

 

これもまた大事なポイントです!

将来を見据えて、インフラを設計するということです。

安易に40台がつながればいいというわけでもありません。

また、生徒がどのような動きをするのかを想定してデザインしなければなりません。

さらに学校環境は微妙にそれぞれ異なります。周辺環境からの電波干渉も場合によっては。これらを鑑みて設計するのが大事ですね。

 

まとめ

同志社さんは、単にiPadを導入しただけではありませんでした。

「教科センター方式」も「ノーチャイム制(チャイムがないんです!)」ということも、学校のビジョンがあるから実施しています。

教育目標に掲げられている「自主性を育成し、自治活動を育てる」ですね。

すべてに意味がある、とても大事なことだと思います。

生徒たちの動きを見ていれば、そのビジョンが浸透していることがわかります。

 

今回の導入にあわせて、学習ポータルサイトが準備されました。


同志社中学校 学習ポータルサイト e-CAMPUS

 

よくあるポータルサイトは、授業や宿題を管理するために用意がされています。しかし、同志社さんでは、自発的な学習をするために用意されている教材ポータルでした。つまり、「明日の宿題はここにあるから、こなして提出しておくこと」のためではなく、「互いのレポートなどを共有して見比べたり、隙間時間をつかって学習できる教材がある場所」のようです。自発的な学習が定着しているからでしょうか、想定外に中3生が活用し、いままでよりも小テストのスコアが伸びたなどの効果が見えているとも。

 

さて、まとまりのないまとめになってしまいました。今回とりあげさせていただいたのは、ほんの一部だと思います。また追加取材をしたいですね。

 

今回、最も大事だと感じたのは、ビジョンがあるということでした。

加えて、次のポイントがクリアされていたところです。

・ビジョンに基づいて実践したいことが明確で、そのために端末が選定されていること。

・スモールステップで展開することで、確実に自分のものにし、課題洗い出しが行われていること。(導入プランがある)

・教員研修が定期的に提供されていること。

 

他国でも成功している実践例と共通しているポイントが数多くありました。

なお、それら海外の事例はまたの機会にご紹介させていただきます。

 

以上。